2020年1月6日月曜日

S.B.Cってこんなトコ 第6章『活動を通じたコミュニケーション力、アウトプット力の醸成!』

~ロボットではなく、人間の育成を~

「現在ある仕事の約半数は、AIや機械に取って代わられる」と言われています。前述の通り、令和時代を生き抜く人間になるには、AIや機械のような「インプットして、それを忠実にこなす」だけのような人材は、スポーツ分野は勿論、社会に出ても生き残れません。
当スクールはバスケットボールスクールですが、バスケだけを教えていればいいとは考えません。知識・技術を得るだけであれば、それこそYouTubeがあれば充分です。当スクールでは、「生身の人間同士が集う場所でしか得られないことを、より多く得てほしい」と考えます。
上級者が初心者に教えること。仲間同士でアドバイスし合うこと。自分で考えること。仲間と一緒に考えること。喧々諤々と意見をぶつけ合うこと。話をまとめること。リーダーシップを取ること。
こういったことを育むため、当スクールでは「あえて教えない」こともあります。

~安易に「教える」ことは、子供達が「自ら考える」機会を奪う~

「あえて教えない」とは、どういうことか。
バスケットボール日本フル代表サポートスタッフで、日本の育成年代指導における中心人物、「バスケットボールの家庭教師」株式会社エルトラック代表・鈴木良和氏は、2019年12月のジュニアバスケットボールサミットにおいて、このようなエピソードを語っています。

「今から10年前、育成年代指導に定評のあるイタリアのサッカークラブに研修に行きました。イタリアのコーチ達は、メニューに沿って大事なポイントを色々と説明するんですが、選手ができていなくても、どんどん次のメニューへ移っていく。日本のサッカー指導者達は不思議に思い、練習後のディスカッションで『何故ちゃんとできていないのにどんどん先へ進むのか。できるようになるまでちゃんと教えなくて良いのか?』と質問をしました。するとイタリアのコーチは逆に不思議そうな顔をして、『貴方達は、コーチの役割を何だと思っているのか?』と質問を返し、続けて『我々は、選手に課題を与えることが仕事であって、その課題を解決するのは彼らの仕事だ。明日も同じメニューをやると伝えてあるので、彼らは明日までに、何をどうすればいいか、考えてくるよ』と答えたんです。これは凄く大きな違いだなと思いました」
「この日本の指導者達が5年10年と指導をしていくと、指導者達は『課題を解決してあげること』が上手くなっていきますよね。そうすると、そこにいる日本の子供達は、『課題を解決してもらう』ことに慣れていくんです。イタリアのコーチ達は、5年10年と指導をしていくと、『課題を与えること』が上手くなっていく。そうすると、そこにいる子供達は、『課題を解決すること』が上手くなっていくんですよ」


如何でしょうか。このエピソードは、日本の育成年代指導の問題点を非常に的確に捉えていると当スクールは考えています。
コーチの仕事は、「課題を解決すること」ではなく、「課題を与えること」です。ミニバスや部活で、時間に追われている指導者や、いわゆる勝利至上主義に傾倒している指導者は、往々にして前者、「課題解決型」の指導者です。指導者が課題を解決することが、目の前の勝利というものを掴むためには、手っ取り早いからです。しかし、それは本当に、育成年代指導の「あるべき姿」なのでしょうか。
他にも鈴木良和氏は、同サミットにおいて、このようなエピソードを語っています。

「ある全国制覇を達成した高校チームのキャプテンが、その後のインタビューで『高校日本一になった経験で得たものは何か』と質問されたところ、『先生の言うことを、何も考えずただひたすら繰り返していて、気が付いたら日本一になっていた』と答え、その過程で何を得たかとか、その後の人生にどう活かしているかと聞かれても、何も答えられなかったそうです」

如何でしょうか。その子にとって高校バスケ時代の栄光は、果たして本当に「成功」と言えるのか。こういった子が将来、社会に出ていって、本当に大丈夫なのでしょうか。
こういったことが、日本の育成年代指導では当たり前に横行しています。それが日本の育成年代指導の常識としてまかり通っていた(今も依然としてまかり通っている)のですが、世界基準ではこのような指導は異常であり、日本のバスケットボールが世界に追い付けないことの根幹なのです。
当スクールでは、いくらバスケットボールの知識技術を身に付けさせても、勝たせても、代表選手や注目選手へと押し上げても、このような子供を生み出してしまっては「コーチングの本質」からは外れる、と考えています。ロボットのようにインプットして実行するだけではなく、それを基にして自分で考え、取捨選択し、最適化し、状況に応じてアウトプットもできる人材を育てたいと考えています。
当スクールが育てたいのは、「バスケを上手にやるロボット」ではありません。バスケを心から楽しみ、バスケを通じて成長できる「人間」です。子供達が当スクールに通うようになって、「意見を持ち、発言するようになった」「優しくなった」「人間味が出てきた」「面白味が出てきた」としたら、そちらの方がずっと、当スクールにとっては嬉しいことなのです。

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